フリーランスはゴールではない。

katsuse.hatenablog.com

このエントリに対して、わりと感じの悪いブコメを書いたので、

会社員→転職→独立して気付いた「選択自体は重要ではない」という事実 - 人の職業を笑うな

フリーランス10年やってる独身の俺からしても、生存バイアスの勝ち組にしか見えない。だからどうということでもないんだけど。大手企業は入れたから、元から優秀な人なんだろう。

2017/07/13 21:41

b.hatena.ne.jp

言い訳めいた、しかしぼんやりとしたエントリを書いてみる。

 

今年で独立して10年目になる。
「30歳までやってダメなら再就職すればいいや」とわりと気軽に27歳で独立し、30歳前後で廃業の危機には陥ったものの、5年目くらいにようやく「あ、わりとなんとかなるかもな」と実感を得て、「フリーでやっていこう」とある程度(この時点である程度だ)腹をくくれた。


しかし一年を通じてやはり波があり、例年、上半期の売上がよろしくない。そういう意味では「来年には食えなくなっているかもしれない」というより、「今年こそダメかもしれない」と冬場は思うわけだが、今年は特にヤバく、貯金を切り崩す生活が続き、「ああ、10年目にしていよいよ廃業か、しかし今更、再就職できるのか?」と震え上がっていた所、7月前後からあちこちから打診を頂けて、今年もなんとかやっていける感触が出てきた。大変ありがたい限りだ。この場を借りて御礼申し上げたい。

 

今まで一人でやってきて、ある程度「居心地のよい場所」を作り上げられたという実感がある。単純に自分の好きな機材や椅子を使ったりというのもだし、好きな音楽を聴いたり終電を気にせずひたすら仕事したり、自分のペースで仕事ができるという意味でもだし、それなりに仕事をしやすい取引先を選んでこれたという意味でも。

 

フリーランスになる」というのは、自分にとって「居心地のよい場所」を作るのが、究極の目標ではないだろうか。
それはひたすら働いてスキルアップできる環境を作ることかもしれないし、ほどよく働きつつ趣味を充実させる生活かもしれないし、フリーを経て起業することかもしれない。
会社が用意してくれたわけではない「居心地のよい場所」は、「自分のペースで仕事をしたい」人間にとっては、ある意味危険なのかもしれない。
web屋でいえば、簡単な更新管理案件だけで、ほとんど働かずに定期収入が得られるようになったとしても、スキルアップをしていかなければ、数年後、どうなっているかわからない。
金さえあれば、フリーランスはサボろうと思えばいくらでもサボれてしまう。


一人でやっていくのが性に合っている気がするが、一方で小規模な事務所を構えたい夢もある。
不眠症の気があり、生活のリズムが狂いやすく、油断してるとすぐ昼夜逆転するので(フリーだと出勤しなくていいしね)、いっそきちんと人雇えるくらいになって事務所を構えた方がいやでも朝起きざるをえないし、収入も上がるし、マネジメント能力もつく(つけざるをえない)し、いろいろ成長につながるだろう。
が、人を雇うのは非常に怖い。現実的な問題として売上が全然追いつかない。何より日々を漫然と過ごしていて、実際そのための努力をしていない。
ミュージシャンになりたいとか、小説家になりたいっていう夢と同じだ。ワナビーなのだ。

 

結婚願望は強いものの、チャンスがなかったわけではないが、結局、結婚をしなかった。踏ん切りがつかなかったというか、まあ差し支えがあるのでボカすが、とりあえず独身である。
フリーで家族を養っていくというのは、相当なプレッシャーがあると思う。
30代はそういった結婚や出産の分かれ目だ。結婚、子供、持ち家。人生を大きく分ける要因は、だいたい30代で明確に分かれる。35年ローンはそのまま受け取れば、30で家を買って65歳で完済するという人生設計を前提としたプランだ。なぜまだ今でもそんなモデルがあるのか不思議だが、結局まだそれが一般的なのだろう。

30代も着々と終わろうとしている。フリーランスとして10年やってるといえば聞こえがいいかもしれないが、公私共々、漫然と馬齢を重ねてきてしまったのが現実だ。
年を重ねる毎に、再就職も結婚も厳しくなる。「選択をしない」というのもある種の選択で、しかしそれはじわじわと真綿で首を絞められるようなもので、すぐには苦しくならない分、タチが悪いのかもしれない。

 

「本当にこれがが俺にとってベストな道だったのか」というのはわからない。苦労もあったが、フリーランスでなければできない経験はそれなりにしてきた。社員としてやっていた方が、スキルも収入も上がっていたかもしれない。だが、ただの無い物ねだりだろう。隣の芝はひたすら青い。青くするための苦労など想像もせず、理想的な状態にしか見えない。人間関係に疲れ、鬱で退職に追い込まれ、再起不能になっていたかもしれない。結局選んだ道しか自分の人生じゃないし、選ばなかった道は二度とわからない。

 

少なくともひとついえるのは、「フリーランスはゴールじゃない」ということだ。基本的に走り続けるしかない。だが、その一方で、フリーランスから社員に戻ったからといって、「負けた」わけでもない。フリーランスなんて一つの業態、職種でしかない。廃業してもA社からB社に転職したのと変わらない。
フリーで10年やってるから偉いわけではない。俺からすれば、社員を10年やってる方が偉いと思う。社員の方が、まず人間関係に悩むことが多いからだ。人間関係、金、健康。それが人間の3大悩みだ。フリーランスは人間関係に悩まない分、金に悩むのかもしれない。

成功するためには、3つの方法しかない。
まず成功の定義を決めること。
成功するまで、やり続けること。
そして、成功したかどうかを判断すること。

 

フリーランスとして成功したか」と問われれば、「わからない」とぼかす。続いていることだけに重きを置けば、「成功している」のだろう。
ベストではないのは間違いないが、ベターとはいえないものの、ワーストでもない。ある程度金に困らず、最悪食うに困らなければいい程度で、「成功」の明確な定義を避けているから、判断基準がない。
「普通」に結婚して、子供を作ってという人生を歩みたかったので、プライベートでは「失敗」しているのかもしれないが、まだ希望は捨ててない。
死ぬまで答えなんてないんだよ、と無難な、しかし投げやりな答えが一番あってるのかもしれない。

強いて言えば、来年も「フリーをやっていたいか」と聞かれれば、イエスと答える。それが成功している証かもしれない。「成功」とか、あんまどうでもいいけどね。
結婚して子供できて金がに困ったら、「すみません、社員なります、就職させてください」って余裕でジャンピング土下座かますだろうけど、少なくとも独身のうちは、他人が成功した・してないと評価するよか、俺が楽しいかどうかが一番大事なわけで。そして、今、わりと楽しい。

 

とりあえず明日も下手なギターとバイオリンを仕事の合間に弾きつつ、すべきことを頑張るのみだ。