インボイス制に対するブコメへの反論。
どうもインボイス制に関するブコメは荒れる。
一般的な会社員と、実際にフリーランスやってる人と、消費税を納税している経営者系の人とで見方が違いすぎて、不公平感からくる怨嗟や、明らかな誤解による中傷も多い。
「え、フリーランスだと消費税がまるまる儲けになってるの? 許せん!」という「気持ち」はわかるんだけど、インスタントな怒りに任せて雑な批判をされても、なかなかウンザリしてしまう。
税制や、その歴史的経緯に関して詳しいわけではないが、15年近くフリーで食ってる一自営業者として、解る範囲でブコメにぐあぁっと反論してみた。
一口にフリーランスや自営業といっても、仕入れなどがなく原価がほぼ掛からない俺のようなIT系・Web系のフリーランスや、個人経営の飲食店も同じ「自営業」になる。飲食店や服屋など小売系の状況はわからないが、以下、俺の場合で語る。当然ながら、俺は当事者なので、ポジショントークにはなるので、その前提で。
間違いとかあれば、ご指摘頂ければありがたい。
ざっくりまとめる
- そもそも免税事業者が消費税を「可処分所得」にするのは合法。脱税でも何でもない。
- 「可処分所得」という言い方が気に食わないのはわかるし、「お前に消費税払ってんじゃねぇよ」となるのも、感情としてはもちろんわかる。
- 課税事業者である1000万を超えるのは相当キツい。そもそもほとんどのフリーランスが売上1000万円以下であり、多くのフリーランスが大ダメージを受けるのは必須。社員の方でも「年収10%ダウンね」と言われたらキツいのでは。てか、そもそもこの失われた30年感ってそういう「可処分所得」が増えないことも一因でしょ。
- 不公平感があるのは理解するが、政府としても多様な働き方やら副業解禁やらで、フリーランスを推進しているにも関わらず、税金を取るべき場所が違うのでは。
消費税の益税に関する経緯としては、こちらが分かりやすいので、ご一読を。益税とは - コトバンク
免税事業者・課税事業者とは。1000万以下のフリーランスは潰れてよい?
まずここから説明しよう。年の売上が1000万以下の場合は「免税事業者」といって、消費税を「納税しなくてよい」。これが「益税」だ。が、1000万を超えると、2年後から「課税事業者」といって、消費税を納税する必要が出てくる。
インボイス制で消費税を納める事になるのはこの免税事業者だが、「フリーランス白書 2019」によれば、「[Q2]現在の収入をお知らせください。(n=869)」という質問に対して、87.5%の人が1000万未満の売上である。フリーランスがほぼ全滅すると言っていいだろう。
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書 2019」(PDF)
これに答えているのは接客・作業系、ビジネス系、IT・エンジニア系、文章系、コンサルタント・カウンセラー系、職人・アーティスト系、専門・士業系、その他のフリーランスで、飲食なんかは「接客に入るのか?」とか、建築業の一人親方は「職人」に入るの?とか疑問もあるが、いちおうの目安にはなると思う。
年収400万未満の人が約50%である。「競争力にない零細フリーランスは淘汰されて当然」というのは、おおよそ現実を見てない暴論で、聴くに値しないというのはご理解頂けるだろうか。
年収1000万以下の社員の税金を増やすようなもんだ。
「預かってる」消費税を「可処分所得とはけしからん、税金泥棒め!
「可処分所得」という言い方がイラッとさせるのはわかる。が、「なんで消費者から『預かってる』ものを勝手に『可処分所得』にするんだ」といわれても、「(可処分所得にしてもいいと)法で決まっているからです」としかいいようがない。公務員の給料が税金だからって、第三者が「あれに使うな、これに使うな」と批難するのと同じだ。逆に可処分所得=消費することで経済を廻した方が建設的だろう。そしてそれをインボイス制で「正そうとしている」のが今なんだろう。
建前上は期が閉まるまで免除対象かわからないから手を付けてはいけない?
実状はわかるのだけど、そう言うのは暗黙の了解というか公言して良いんだっけ?建前上は期が閉まるまで免除対象かわからないから手を付けてはいけないのでは?
2021/10/20 22:35
「暗黙の了解」かどうかは知らないし、「免除対象かわからない」ということも(俺の場合は)ない。少々煩雑になるが説明しよう。
よく言われることだが、フリーランスの収入には波がある。俺の場合、納品後末締め翌末払いの事が多い。たとえば50万の仕事のみをしている場合、それを10月29日に納品できず、11月1日に納品となった場合、11月の収入はゼロで、12月の収入が50万となる。「売上がゼロの時月があれば、100万を超える時もある」というのは、そういう納品のタイミングもある。
年単位でも波はあり、前年比100万、200万単位で売上が落ちることもある。なので、売上がよかった年の翌年の売上が悪いと、税金で死ぬことになる(今の俺だ)。
とはいえ、長年フリーをやってると、年でならすとだいたい同じくらいに収まる傾向が多い。まあ、その人の「器」みたいなもんだ。なので、消費税を納めるべき状況か否かというのは、だいたいわかる。そもそも、前述の通り消費税を納める=1000万を超えるのは難しい。
とはいえ、
半年間に1,000万円超の売上があると、その年から課税事業者となり翌年には消費税の納税が必要だと理解してください。
らしいので、id:mobile_neko氏のいうように「建前上は期が閉まるまで免除対象かわからないから手を付けてはいけないのでは?」というのは、よっぽど売上がいい時くらいで、正直、「免除対象かわからない」なんてことは、なった事はない。
「手をつけてはいけない」というより、「手をつけるとあとで納税できなくなるので、自分が困る」と言う方が適切だろう。文字制限のあるブコメで厳密さを求めるのは酷だろうが。
なんか正論というか建前を言ってる人が多いけど、実質は所得だったんだから、それが減るのは確かでしょ。会社の備品を一度も私用に使ったことのない者だけが石を投げなさい。2021/10/20 23:09
前半はその通りなんだけど、「会社の備品を一度も私用に使ったことのない者だけが石を投げなさい」というのは勘弁してください。会社の備品を私的に使うのは、些事だが、明確に違法です。退職時にボールペン一本でも持って帰っちゃいけないとかよく言うけど、「違法なのに見逃されてる」的なグレーな話と違って、免税業者が益税という形で消費税を納税しないのは、まったくの合法です。違法行為と合法行為を同列に扱わないでください。それにスターが集まるのも勘弁してください。
その個人商店は潰れてしまっても構わないのでは?全額社会保障に使うって言ってる消費税の使い途として批判されるやつだろ
2021/10/20 23:59
個人商店はわからないけど、前述の通り、小説家、マンガ家、ライター、アニメ業界、クリエイター系で1000万超えるのはごく一部の売れっ子かと。それ以外は廃業しても良いと? 創作系の自営業は結構なダメージを喰らいます。勘弁してください。
「全額社会保障に使うって言ってる消費税の使い途」云々、そもそも全額使われてないようなので、そっちもご助力願います。
つまり私は脱税していますってことですね。税務署さん、この人です。2021/10/20 23:49
典型的な無理解による誹謗中傷。脱税ではないし、税務署さんもちゃんと確定申告してれば解ってるので、まったく意味ないです。
源泉徴収されてるサラリーマンからするとテメー税金払えよ!としか思えないな2021/10/20 23:53
たしかに自営業は住民税やら社会保険料、年金は「天引き」されてるわけじゃないけど、業種によるけど、BtoBだと自営業も源泉徴収されます。
払った税金を勝手にポッケナイナイしてた状況を正常化するのは当然だろ。税金をちょろまかさないと採算の立たない零細企業を守るために消費税があるわけではない2021/10/21 00:24
「正常化するのは当然だろ」はわかりますが、「払った税金を勝手にポッケナイナイしてた状況」「税金をちょろまかさないと採算の立たない零細企業を守るために消費税があるわけではない」っていうのはご認識による誹謗中傷に近いですね。「勝手に」じゃないし、「ちょろまかしてる」わけではない。何度も言いますが、合法です。それを正常化させる方が望ましいという意見はわかりますが、「ちょろまかす」とかの抽象は勘弁して頂きたい。
1000万以下の個人商店は納税義務がないのだから、消費税を請求するのが間違いではないか。インボイス制度でも請求書に消費税を0円で請求すればいいのでは?
2021/10/21 08:33
消費税が利益だ言い張っても…消費税増税するほど儲かる仕組みおかしくね?やはり免税事業者に消費税を払わないが最適解。最終消費者の消費税安くなるし。2021/10/21 08:53
マジで言ってるのかちょっと疑うんだけど、こういうのが一番困るんです。「年商1000万以下の個人事業主の請求は消費税を払わなくて良い」なんて法律はありません。逆です、払わないと違法です。場合によっては明確に下請法違反。
今年もうちにもきましたが、公正取引委員会・中小企業庁が「消費税転嫁等拒否等に関する調査」ってのをやってて、匿名で告発ができます。御社、刺されるから止めた方がいいですよ。違法な事はしない方がいいです。
俺も一度「おたく個人事業だから、消費税払わなくていいよね?」って言われた事があって念のため税理士に確認したけど、当然とっていい。こっちの売上とか関係ないから。
消費税導入当時から言われており、早いうちに制度を改めるべきだった。3パーセントと10パーセントでは制度改正による零細業者へのダメージが違う。とは言え、どこかで折り合いをつけねば…
2021/10/21 06:51
穏当な正論だと思います。
・もっとスケールの小さい話、例えば副業でイラスト書いてる人の売り上げが10%減る、もしくは10%乗せて請求しなくてはいけないと言うと深刻さ分かるかな? - town2town のブックマーク
・庶民同士の叩き合いの構図で誰かさんたちの思う壺の様相 - m-kawato のブックマーク
まとめて失礼。そういうことなんです。
売上がほぼ利益のITフリーランスは普通に消費税を利益とみなす。納税しつつ免税より多く利益を得るには月額単価の相場的な壁があり、わざと収入を抑えて免税事業者になる人が多い。単純な計算の問題。
2021/10/21 07:45
この辺はわかんないんっすけど、話には聴く。高収入で比較的短期で入ってるエンジニアなら、たしかに「わざと収入を抑えて免税事業者になる」っていう調整はしやすいだろうし、俺も10月くらいで売上が900万行ってたら、調整するかも。ただ、その辺はまったくもって合法な節税なのでは。
いつもブラックじゃないとやっていけない企業は潰れろって言ってるはてブが個人事業主になったら優遇されてもおかしくないって言ってるのはなぜ?
2021/10/21 10:25
免税事業者に違法性は一切ないので、ブラック企業と比較することが間違いです。
で、お前はどーすんの?
うちは一人社長からそこそこの中小企業、一部上場企業までピンキリお客さんがいるけど、どうも免税事業者のままでいるのは、交渉が面倒くさそうなので、課税事業者になろうかと考えています。が、俺は確定申告を税理士に丸投げしてるんだけど、+3万(税抜)かかるようになるらしい。税理士の儲けが増えるとはいえ忙しい時期に手間も増えるわけで、ねえ、これ誰にメリットあるの?