長谷川豊の卑劣さ、あるいは今ここにある虐殺の文法(『虐殺器官』のネタバレ)

トルコや北朝鮮のような権力者による粛正=虐殺ではなく、一般市民による虐殺とはどうすれば起きるか。

単純だ、少数派を「殺してもいい」ほど下劣で低俗で卑怯な社会の敵で、生きるに値しない=殺しても良い存在だと憎悪や軽蔑の念を抱かせ、実行させることだ。

今フィリピンで起きているのがまさにそれだ。麻薬犯罪者であれば、殺していい。信じられないことに、この21世紀に今、まさに行われている。

 

 

フィリピンの件は海外だが、おそろしいことに日本でも「虐殺文法」が使われている。魚拓から。

megalodon.jp

 

「遺伝的な疾患も確かにあります。しかし、私の見立てでは…8~9割ほどの患者さんの場合「自業自得」の食生活と生活習慣が原因と言わざるを得ません」

とした上で、

人工透析患者は「身体障がい者1級」に該当するようになっています。
え?身体障がい者
そうです。人工透析患者は「1級の身体障がい者に認定されます。で、そうなるとどうなるか

・映画館の利用が常に半額(者1人同伴も半額)
・公共交通機関の利用料の半額(者1人同伴も半額)
・タクシーの初乗運賃の無料チケットが貰える(1枚1枚に利用期間の設定有り)
・高速道路の利用料金の半額

など、様々なサービスが受けられます。もちろん、ディズニーでもほとんど並ぶ必要がありません。だって障がい者ですから。横入りし放題です。

で、「1級」なので「障がい者年金」がもらえます。毎月かなりの額ですが、それらは地方自治体によって差があります。さらに、彼らは「医療費」をすべて無料で受けられます。だって「1級障がい者」ですから。

 

「1級障がい者」自体がさも「特権」を受けているように書いた上で、

なのに、周囲が注意しても聞かず、病院に行っても先生の言うことを聞かず、何年もかかって体を蝕み、何年も周囲に迷惑をかけ続けているバカたちが…

健康を意識し、
毎日、ランニングをし、
お金を出して栄養バランスの良い食事をとっている人たちから保険料を巻き上げ、その金を使って、

ディズニーの横入りをし、
全額タダで医療を受け続け、
毎月『障がい者年金』を支給され
タクシーにタダ乗りしているのです。

と、あたかも人工透析患者の「8~9割ほどの患者さん」が「自業自得」にも関わらず、「特権」を欲しいままにしているように思わせる。

 

在特会と同じ手法。あたかも在日韓国人「全員」が不正に生活保護を受給していて、働きもせず納税もせずに、ベンツでも乗り回してるように思わせる。実際の不正受給率は「件数ベースで2%程度、金額ベースで0.4%程度」(生活保護制度はどうなっているの? - 日本弁護士連合会 PDF

『「特権」を貪るわら人形』論法こそ、虐殺の文法といえるだろう。

 

まあただの炎上狙いの逆張り野郎が、大衆を動かすだけの影響力を持つとは思えないんだけど、しょーもないゴシップの逆張りで炎上してる分にはまだいいものの、比喩ではなく「殺せ」等と言い出したら、言論で徹底的に潰さないとダメだろう。「在日特権」であるはずの「通名」を自分も使いながら、都知事に立候補してヘイトスピーチを演説してやまない阿呆が、それなりの影響力を持ってしまう世の中なんだから。

 

究極の少数派というのは、個人=自分自身だ。そこに性差も学歴も国籍も病歴も社会的地位も関係ない。「私が私でしかない」ことこそが、マイノリティである。そのマイノリティを守る唯一の武器が、「基本的人権」なのだ。
いわゆる「普通の人」でさえ、一見マジョリティに見えて、実は様々な観点から見れば重層的なマイノリティに属している。いつそのマイノリティが社会的に排撃されるかわからないからこそ、基本的人権があるわけで、それを得るために人類がどれだけの思索を重ねて、血を流し続けてきたか、そして未だに血を流し続けているかを考えれば、そう易々とそれを手放したり、他者に捨てさせようとする行為を見逃すことはできないだろう。

 

彼のタイトルを借りれば、「自業自得の炎上野郎なんて、全員メディア・ネットから干せ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本の言論を亡ぼすだけだ!!」となる。自らの言葉でありとあらゆるメディアから「そのまま殺」されればよいのではないでしょうか。それが言論の自由であり、発言への責任だ。